この記事では、これから水彩画を始めてみたいと思っている初心者の方へ、2種類の水彩絵の具をご紹介します。
また、「ガッシュ」という絵の具をこれまでになんとなく聞いたことはあるけど、どんな絵の具なのかはっきりとは知らない、という方にも参考にしていただければと思います。
水彩絵の具と言っても、「透明水彩絵の具」と「不透明水彩絵の具」があるのをご存じでしょうか?
日本では、「水彩画」といえば、「透明水彩」のことを指している場合が多いと思いますが、実は、水彩には大きく分けて2種類が存在します。
しかし、同じ水彩でも透明水彩と不透明水彩は、その特徴に大きな違いがあります。
この2つの水彩絵の具の特徴を踏まえて、自分の作品にはどちらの絵の具が合っているのか、選ぶ時の参考にしていただけると嬉しいです。

・水彩画を始めてみたい方
・水彩絵の具のことをもっと知りたい方
・透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)どっちにするか迷っている方
そんな方へ向けて
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の特徴
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の選び方
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の使い方
初心者向けのおすすめ商品とは?
などを解説しています。
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の違いとは



水彩絵の具には2種類あるわよ



同じ水彩だけど、何が違うのかな?
同じ水彩でも、この2つの絵の具の特徴は大きく違っています。
透明水彩と不透明水彩の違いについて、一つ一つ具体的に分かりやすく解説していきます。
絵の具はどんな材料からできている?



絵の具って何でできてるのかな??



わかりやすく説明するわね
そもそも絵の具はどんな材料から作られているのでしょうか?
絵の具は、「色の粉」と「糊」でできています。
この「色の粉」は ⇒「顔料」と言います。
そして、「糊」は ⇒「バインダー」又は、「展色材」と言います。
顔料は粉なので、粉を紙に定着させるために接着材となる糊が必要になるのです。
絵の具には、油彩、アクリル、水彩などありますが、どの種類の絵の具もみんなこの「顔料」と「バインダー・展色材」からできています。
・油絵具の展色材は⇒「油」
・アクリル絵の具の展色材は ⇒「アクリル樹脂」、
・水彩絵の具の展色材は ⇒「アラビアゴム」
このように、顔料をどんな糊(展色材)で紙に接着させるかにより、油絵の具やアクリル絵の具、水彩絵の具になるのです。
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の成分の違い



絵の具の基本的な材料は分かったけど
「透明水彩と不透明水彩」絵の具の材料は何が違うのかな??
絵の具は、顔料と展色材で出来ているというお話しをしました。
では、透明水彩と不透明水彩の材料の違いは何でしょうか?
結果から言うと、材料自体は同じものから出来ています。



じゃあ、何が違うの?
透明水彩と不透明水彩の違いは、混ぜる材料の量の違いです。
・透明水彩
不透明水彩と比べて顔料が少なく、展色材(アラビアゴム)が多い。
・不透明水彩(ガッシュ)
透明水彩と比べて展色材(アラビアゴム)が少なく、顔料が多い。
顔料よりも、糊(アラビアゴム)の量が多く入っている透明水彩は、絵の具に光を通すので、透明に見えます。
反対に、糊(アラビアゴム)よりも、顔料の量が多く入っている不透明水彩(ガッシュ)は、絵の具の奥まで光を通さないので、不透明に見える、というわけです。



材料は同じだけど、材料の配合比の違いですね!
パレットの使い方の違い
透明水彩と不透明水彩は、その性質の違いからパレットに絵の具を出す際の違いがあります。
・透明水彩
絵具をパレットに出して乾燥させ、固めておいて、描く時に水に濡れた筆で溶かして使います。
透明水彩の絵の具は、乾燥して固まっても水に濡らすと溶けて使えるようになります。


・不透明水彩(ガッシュ)
描く際に、その都度パレットに絵の具を必要な量だけ出して使用します。
不透明水彩は、絵の具の濃度を活かして描くので、透明水彩のようにパレットに固めた絵の具を水で溶いて使用すると、濃度が薄くなり、不透明水彩本来の描き方ができなくなります。
技法・塗り方の違い


・透明水彩
透明水彩は、色を塗り重ねると、下に塗った絵の具が透けて見えるという大きな特徴があります。
この特徴により色を塗る際は、薄い色から塗り始めて、濃い色を塗り重ねていきます。
また、水を多く使って描くことも透明水彩の特徴です。
「ウエットインウエット」など、水を活かした技法が多く、絵の具の美しい滲みも透明水彩の魅力の一つです。


・不透明水彩(ガッシュ)
不透明水彩は、透明水彩とは反対に、塗り重ねた際、下の色が透けません。
この特徴により、絵の具を塗り重ねることで簡単に修正ができたり、透明水彩のように、色の濃さにより塗り重ねる色の順番を考える必要がありません。
水を少な目に絵の具を溶くと、重厚感のある仕上がりになります。(但し、あまり厚塗りにしすぎると、ヒビ割れの原因になります)
「水張り」の必要性の違い
・透明水彩
透明水彩は水を多く使うため、描いている際に水彩紙が水で濡れて、波打ってしまいます。
紙が波打つことで、絵の具がムラになったり、紙がデコボコの仕上がりになったりします。
そのため、透明水彩は、大きなサイズの水彩紙になるほど水張りが必須になります。


・不透明水彩(ガッシュ)
透明水彩のように、水を沢山使わないので水張りは不要です。
絵の具の乾きも透明水彩より早く乾きます。
「白」の表現の違い
・透明水彩
透明水彩の「白」は、「紙の白」です。
白い部分を塗り残す必要があるので、構図を考える際、塗り残す部分をあらかじめ考えておきます。
例えば、光が当たっている部分などは、紙の「白」を塗り残して表現します。
また、色の明るさを(明度)を上げるには、絵の具に水を加えて明るくします。
・不透明水彩(ガッシュ)
不透明水彩の「白」は、絵の具の「白」を使います。
また、不透明水彩の場合は、「白」の絵の具を混ぜて色を明るくします。
仕上がりの違い
・透明水彩
透明感のあるみずみずしい印象の仕上がり。
繊細で、柔らかい表現に向いています。
・不透明水彩(ガッシュ)
アクリルや油彩に似た力強い、重厚感のある仕上がり。
しっかり発色し、マットな質感になります。



同じ水彩画でも透明水彩と不透明水彩では
出来上がりの作品の雰囲気が随分違うね。
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ) 初心者向きはどっち?


透明水彩と不透明水彩のどちらが初心者の方に向いていますか?と質問されると、やはり不透明水彩ではないでしょうか。
日本では、「水彩」というと、「透明水彩」のことを指すように、透明水彩の方が浸透していますが、実は、透明水彩は初心者にとって、水のコントロールに慣れるまでは難しいところがある絵の具です。
色ムラができたり、重ね塗りすると下の色が剥げてしまったり…など経験のある方も多いのではないでしょうか。
水彩画を初めて描く方は、不透明水彩から慣れていくのもいいと思います。
不透明水彩は、描いたあとから簡単に修正ができる点も初心者の方へおすすめしやすいポイントです。
ただ、透明水彩には、透明水彩ならではの良さがありますので、どちらの水彩も試してみて、ご自分の作品に取り入れていくとよいですね。
透明水彩と不透明水彩(ガッシュ) 混ぜる使い方はできる?
結論から言うと、透明水彩と不透明水彩の絵の具は併用することができます。
具体的には以下のようなことが可能です。
透明水彩と不透明水彩の絵の具を混色して使用する
透明水彩と不透明水彩の絵の具を混色すると、配合比により、様々なテイストの絵の具ができるので、表現の幅が広がります。
例)透明水彩で描いた絵にハイライトとして不透明水彩の「白」を使う
例)不透明水彩で描いた絵のモチーフに透明水彩を重ねて塗ることで、下に塗った不透明水彩の色のを活かしながら、繊細なニュアンスの色の表現ができる。
例)透明水彩で描いた絵の中に不透明水彩を一部使用し、力強い表現をプラスする。
<混ぜて使用する際の注意点>
透明水彩で描いた絵に不透明水彩を重ねる場合、又はその反対の場合、どちらも下に塗った絵の具をしっかり乾かしてから重ね塗りしましょう。
学童向けの絵の具(ぺんてる エフ水彩)は透明?不透明?


ぺんてるから発売されている「エフ水彩」は、学童用としてよく小学校などで使われている絵の具です。
この絵の具は、水を多めで溶くと透明水彩風に、水を少な目に溶くと、不透明水彩風になり、子供が使いやすい仕様になっています。
ただ、「不透明水彩風」といっても、下に塗った色をすっかり覆い隠してしまうほどではありません。
エフ水彩は、学童用として使われていることを考えても、初心者の方に使いやすい水彩絵の具だと言えますが、価格の面でも安価なので、初心者の方に練習用として使いやすい絵の具です。
アクリルガッシュと不透明水彩(ガッシュ) 何が違う?





同じ「ガッシュ」だけどどこが違うのかな?
「ガッシュ」というと、「アクリルガッシュ」と「不透明水彩ガッシュ」の2種類をよく耳にすると思いますが、この2つは何が違うのでしょうか?
基本的な大きな違いは、絵の具の材料である展色材の違いです。
アクリルガッシュは顔料とアクリル樹脂、不透明水彩は顔料とアラビアゴムでできています。
この展色材の違いにより、不透明水彩は水に溶けますが、アクリルガッシュは水に溶けません。
また、注意する点として、パレットの使い方の違いがあります。
不透明水彩は使用後にパレットを洗うと綺麗に落ちますが、アクリルガッシュは固まって取れなくなるため、使い捨てのパレットなどを使用します。
発色については、アクリルガッシュの方が不透明水彩より発色が良いです。


透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)選び方のポイント
透明水彩と不透明水彩の違いや特徴について解説してきましたが、では、実際に「自分に合っているのはどっちなのか?」迷ってしまいますよね。
ここでは、選び方のポイントについて考えてみましょう。
仕上がりで選ぶ
仕上がりの違いについては、既にみてきましたが、不透明水彩の大きな特徴は、アクリルや油絵のような重厚感のある仕上がりにできることでした。
透明水彩は、にじみの効果を使った技法など、繊細で透明感のある仕上がりが美しい絵の具です。
「どんなイメージの絵にしたいのか」によって選ぶといいですね。
使いやすさで選ぶ
不透明水彩は、下に塗った色が透けないので、濃い色、薄い色の順番を考えずにどの色からでもどんどん塗り進めることができますし、この透けない性質から、描いてしまった後から大きく修正をすることも可能です。
また、絵の具が固まっても水に溶けるので、透明水彩と同じパレットを使用することができます。
こうした点は、初心者の方に使いやすい絵の具であると言えます。
透明水彩は、下の色が透けて見える性質の絵の具ですから、濃い色の上に薄い色は塗れません。
また、あまり多くの色を塗り重ねると色が濁りますので、なるべく手数を少なめに仕上げることが美しい仕上がりにつながります。
その他、透明水彩は、大きな修正はできないこと、白は紙の白を残すこと、などを考え、描き始める前に計画を考えておく必要があります。
こうした点が、初心者の方に透明水彩は難しいと言われるところかと思いますが、初めに透明水彩に慣れてしまえば、他の絵の具を使いやすくなるとも言えます。
透明水彩と不透明水彩 どっちも使ってみる



どちらも素敵な絵になりそうね



どっちも使ってみたい!
透明水彩と不透明水彩はどちらもそれぞれに良いところがありますので、どちらも使ってみるのが一番おすすめです。
どちらも使ってみて、それぞれの良いところを活かせる絵が描けると、表現の幅も広がります。
また、同じ絵の中で透明水彩と不透明水彩を併用して使ってみるのもありです。
併用の具体的な例は前の章で書いた「混ぜる使い方はできる?」を参考にしてみて」くださいね。
初心者向きのおすすめ商品紹介


初めて透明水彩と不透明水彩を使う初心者の方へ、私の使ってみた経験からおすすめの商品をご紹介します。
透明水彩 初心者向きのおすすめ商品 「ホルベイン」


比較的安価に手に入りやすく、品質も良い商品として
「ホルベイン 透明水彩セット」がおすすめです。
セットの色は、できれば18色あるといいですね。
ホルベインの絵の具は、多くの画材屋さんで取り扱いがありますし、ネットショップでも購入できます。
不透明水彩(ガッシュ) 初心者向きのおすすめ商品


不透明水彩の絵の具も沢山のメーカーから発売されていますが、初心者の方におすすめするのは
「ホルベイン」と「ターレンス」です。
ターレンスは価格の点ではおすすめですが、12色セットのみで、色数が少ないのが難点です。
その点、ターレンスと比べるとお値段は少し高くなるのですが、ホルベインは色数が豊富にあります。
まずは、ターレンスで使ってみて、続けて使いたい場合は、ホルベインを購入するとよいのではないでしょうか。
まとめ
透明水彩と不透明水彩は同じ水彩絵の具でありながら、仕上がりの雰囲気や、それぞれの絵の具の使い方の違いなど、その特徴に大きな違いがありました。
あなたはどっちを使ってみたくなりましたか?
それともどっちも使ってみたくなりましたか?
一口に「水彩画」といっても、絵の具の違いで様々な表現ができます。
この記事を参考にしていただき、あなたの水彩画がもっと魅力的な作品になりますように!