初心者でも描ける!透明水彩で始める風景画の描き方と上達のコツ

花の咲く丘

透明感あふれる自然を描こう!初心者のための水彩風景画レッスン

旅先などで「こんなきれいな風景を描いてみたい♪」と思っても「何から始めたらいいのかわからない」「難しそうで不安」という初心者の方も多いのではないでしょうか?

特に「風景画」は透明水彩ならではの透明感を活かした自然の美しさが表現できる題材です。

そこで今回は、透明水彩絵の具を使った風景画を、初心者が楽しみながら描けるように、必要な道具、モチーフの選び方、構図の取り方、塗る順番、そして上達のコツまで丁寧に解説します。

ここでは、初心者が取り組みやすい「自然の風景」を描く場合について解説していきます。

初めての一枚が描けたときの喜びをぜひあなたも味わってくださいね。

ゆい

この記事のおすすめポイント!

水彩画が初めての方や、風景画を初めて描く方へ向けて、美しい風景画を描くための上達のコツをわかりやすく解説しています。

必要な道具
モチーフの選び方
構図の取り方
塗る順番
上達のコツ(遠近法など)

目次
絵筆とパレット
ゆい

水彩の道具は油絵などと比較すると、簡単で安価な道具から始めることができるのも初心者さんにとっては始めやすいポイントですね。

たまちゃん

具体的には、どんな道具がいるのかなあ?

ゆい

まずは、最低限必要な道具から揃えましょう。
描いていくうちに必要な物があれば、あとで買い足していくのがいいわよ。

絵の具(透明水彩)とパレット

<絵の具(透明水彩)>

水彩初心者の方には、どこの画材店やネットショップなどでも手に入りやすい、そして比較的安価な絵の具がおすすめです。

また、絵を描いていくうちに、絵の具を買い足したり、セットに入っていない色の絵の具が必要になることも多いので、絵の具が「バラ売りで手に入りやすい」ということも絵の具選びのポイントです。


⇒ 「ホルベイン透明水彩絵の具 18色セット」

ホルベインの絵の具は、品質、お値段、手に入りやすさの面から1番のおすすめです。

<パレット>
プラスチック製のパレットは、100円ショップでも手に入ります。

但し、プラスチック製のパレットは、絵の具の色が染みついて取れにくいので、使っていくうちに、汚れてきます。

できれば、画材店などでアルミ製のパレットを用意できるといいですね。

水彩紙

水彩画は、どの紙を使うかにより、絵の仕上がりに大きく影響があります。

水彩絵の具は水を多く使うため、画用紙や、コピー用紙などにはうまく描けませんので、風景画を描く際には、必ず水彩専用の紙を使ってください。

水彩紙には、「スケッチブック」のタイプや、紙の四隅を糊で固めた「ブロックタイプ」などがあります。

「ブロックタイプ」はそのまま描いて、絵が出来上がってから紙を剥がせるので便利です。

様々なメーカーから水彩紙が発売されていますが、お値段や手に入りやすさ、描きやすさなどから初心者さんには次の水彩紙がおすすめです。


 ⇒「ホワイトワトソン ブロック 300g」
 ⇒「Ohuhu ブロック 300g」

水彩紙には、大きく分けて、「コットン紙」「木材パルプ紙」「コットン+木材パルプ」がありますが、初心者さんには、色を塗った後でも修正がしやすい「木材パルプ」又は「コットン+木材パルプ」の水彩紙が使いやすいです。

描きにくい筆では、なかなか思うように描けません。

絵の仕上がりにも大きく影響しますので、初心者さんでもある程度の品質のものをお勧めします。

筆の種類としては、丸筆のサイズ大小それぞれ1本ずつと、平筆1本があるとよいですね。

具体的なサイズの目安としては、水彩紙の大きさにもよりますが

  ⇒ 丸筆 12号前後と4号前後
  ⇒ 平筆 10号前後

このあたりの大きさの筆があるとよいです。 

また、日本画の筆ですが、「彩色筆」は太い線も細い線も描けますし、羊毛で作られているので筆先がやわらかく、色の重ね塗りをする際に、下に塗った色が剥げにくいので、1本あると便利です。

メーカーは、「ホルベイン」「名村大成堂」などがネットでも手に入りやすいです。

筆は種類が多く、使い勝手の感覚は個人差も大きいので、絵を描いていくうちに、自分に合った筆をみつけてみましょう。

その他の道具

その他、次のような道具があるといいですね。

筆洗(水入れ)
水が入ればなんでもOK!
2つあるといいですね。一つは筆を洗うための水、一つは絵の具に水を加えるときに使う綺麗な状態の水として使います。筆を洗うための水はすぐに汚れてしまいますので、大き目の水入れを用意します。

鉛筆
絵のレイアウトや明暗を考えたり、色を塗る前の下描きをする際に使います。
鉛筆の濃さはHB前後が描きやすいです。下描きをする際、濃すぎる鉛筆をつかうと消しゴムで消しても線が残ってしまう場合があります。

練消しゴム
下描きした鉛筆の線を消したりする際に使います。練消しゴムは自由に形を作れますので、狭い範囲を消したり、紙面をコロコロ転がして鉛筆の線を薄くしたりなど、使い勝手がよいです。消す際には、紙面を強くこすると水彩紙を傷めてしまいますので、気を付けて消すようにします。

タオル
水彩は、水分コントロールが上達のコツです。タオルは、筆の水分量を調整する際に使います。綿100%で、使い古したタオルの方が水をよく吸ってくれます。

ティッシュ
ティッシュは、筆の水分調節に使用するほか、「リフティング」という水彩の技法にも使用します。リフティングとは、色を塗った部分を水筆などで拭きとったあと、ティッシュで押さえることで、白抜きする技法です。空に浮かぶ雲や、光の当たったハイライト、表面の質感、模様などを表現することができます。


風景画では、水彩画の技法の「ウエットインウエット」をよく使いますが、紙面が乾いてしまうと絵の具のにじみが上手くでないので、乾いてしまったときは、スプレーで紙面を濡らすと、にじみをきれいに描くことができます。スプレーボトルは100円ショップにも売ってあります。

ゆい

初心者さんの道具選びについては、こちらの記事に詳しく書いていますので、読んでみてくださいね!

たまちゃん

「リフティング」や「ウエットインウエット」などの水彩画の技法については、こちらの記事で詳しく説明しているよ。参考にしてね!

菜の花と山の風景

風景画を描くうえで、遠近感の表現はとても重要なポイントです。

絵の中に「奥行き」や「広がり」が感じられることで、観る人はまるでその風景の中に入り込んだような没入感を得ることができるからです。

逆に遠近感がうまく描けていないと、平面的に見えてしまい、風景画の魅力が半減してしまいます。

水彩画では、色の濃淡やにじみの効果、そして構図を工夫することで遠近感を表現することができます。

ここでは、風景画を描く際に大切な遠近感を表現するための基本的な技法について解説します。

この基本技法を組み合わせることで、広がりのある風景を表現してみましょう!

ゆい

遠近感を表現できると、初心者でもグッと完成度の高い作品に仕上げることができます。

風景画に挑戦する際は、この3つの遠近法をぜひ取り入れてみてくださいね!

空気遠近法とは?

丘の景色

皆さんは、自然の中の見晴らしの良い展望台などで遠くまで見渡した時、遠くに見える山々は、ブルーのようなグレーのような薄い色に見えているのを体験したことはあるでしょうか?

また、遠くに見えている山や、その輪郭線は近くの風景と比べると、ぼんやりと見えています。

これは、あなたが見ている景色が大気の影響を受けているから起こる現象です。

空気遠近法とは、こうした大気の性質を利用して遠近感を表現する技法です。

絵を描く際には、手前のモチーフは濃い色を使って、はっきりした線で描き、奥に行くほど淡い色で塗ることで、自然な遠近感が生まれます。

例えば、山並みの風景画を描く際は、手前の山を濃い色で、奥の山を青やグレーで薄く塗り、輪郭線もぼんやりさせることで、空気感のある奥行きが演出できます。

空気遠近法を意識することで、画面に広がりや臨場感が加わり、より魅力的な風景画になります。

色彩遠近法とは?

色彩遠近法は、色を暖色系と寒色系に分けて考えます。

赤や黄などの暖色系の色は、手前に向かってせり出しているような見え方をしますが、青や紫などの寒色系の色は、奥へ向かって引っ込んでいくような見え方をします。

これは、色が人に与える心理的な作用や、視覚的な効果を利用した遠近法です。

色彩遠近法の図

また、明度や彩度によっても遠近感を表現することができます。

「明度」とは、色の明るさや暗さの度合いで、明度が高いほど白に近づき、明度が低いほど、黒に近づきます。

「彩度」とは色の鮮やかさの尺度で、彩度が高い色は鮮やかで鮮明に見え、彩度が低い色はくすんで見えます。

明度や彩度が高いと手前に見え、低いと遠く奥まって見えます。

大小遠近法とは?

この遠近法はわかりやすいですね。

手前のものを大きく、そして、遠くのものをだんだん小さく描くことで、奥行きを表現できます。

並木道
ゆい

これらの遠近法を意識しながら、「近景」「中景」「遠景」を描き分けることで、広がりや奥行きを感じる絵を描くことができますよ♪

道に座っている女の子
たまちゃん

どんな風景画を描こうかなぁ
ワクワクしてきた!

では、遠近感を意識しながら、近景・中景・遠景を描くことが大切だとわかったところで、ここからは、風景画を描くための準備をします。

透明水彩絵の具で早く風景画を描いていきたいところですが… 

素敵な風景画にするためには、絵を描く前に決めておかないといけないことがあります。

では、順を追って解説していきます。

初心者に最適な風景モチーフの選び方

まずは、初心者でも取り組みやすい、シンプルで親しみのある自然の風景から始めてみましょう。

風景の名所に行かなくても、身近にある風景も絵にすると素敵だったりします。

散歩の時、通勤やお買い物の時など、日常いつも見ている風景の中にも見落としている素敵な風景をみつけてみてくださいね。

<風景モチーフの一例>

自然の風景の中にある木や空、水などは、形が多少崩れても自然に見えるため、初心者が緊張せず描きやすいモチーフです。

•         田園の風景
•         青空と雲だけのシンプルな空の風景
•         山並みと川のある静かな風景
•         海辺の風景や灯台
•         季節感のある風景(桜並木、紅葉の並木道など)      

ゆい

まずは、のびのびとしたタッチで楽しく描くために、シンプルな風景から選んでみましょう!

たまちゃん

楽しく描くと絵にも表れるよね♪

風景画のレイアウトを考える

どんな風景を描くか、決まりましたか?

描く風景が決まったら、その景色の中から自分が「一番描きたい」、「テーマにしたい」、と思うモチーフを選んでみてください。

紙面の中で、描きたいモチーフをどの位置に置くかを考え、風景を切り取ってみます。

切り取った画面を見ると、画面の中の「どの部分を切り取るのか」で、大きく印象が変わるのがわかると思います。

自分が一番描きたい印象になるように、画面を切り取ってみましょう。

また、切り取る際は、画面の中にあまりたくさんのモチーフを入れてしまうと、何が描きたいのかわからない、ぼんやりした印象の絵になってしまいます。

綺麗な風景を見ると、あれもこれも描きたくなってしまいますが、欲張らずに1つのテーマに絞り、画面を切り取って構図を考えてみましょう。

風景画の明暗を考える

絵を描く際には、明暗を意識することで、絵が立体的になり、メリハリが生まれ、生き生きとした風景を描くことができます。

風景画には夜の風景もありますが、ここでは、わかりやすく昼間の風景で考えてみます。

まず、太陽の光が「どの方向から当たっているのか」を考えてみてください。

光が当たっている部分は明るく、温かく見えていますし、太陽の光によって影が落ちています。

風景を写真に撮って、モノクロにしてみると明暗がわかりやすいですね。

木の写真
木の白黒写真

この明暗の配置を大まかに3段階~4段階ほどに分けて、構図の中での配置を考えておきます。

構図を考える際は、本番で描く水彩紙ではなく、ノートなどにモチーフの配置と3段階~4段階に分けた明暗の配置を大まかに描いておくとわかりやすいです。

この時の明暗の配置図は細かく描く必要はありません。

頭の中を整理するように、簡略的に大まかに明暗の配置を塗り分けた図を描いておきます。

また、透明水彩は、一番明るいのが絵の具ではなく、「紙の白」なので、白く塗り残す部分もこの時に考えておきます。

この明暗の配置は、絵を描き始める前に考えておくことが風景画の成功のコツです。

風景画の下書き

ここまで出来たら、風景画を描く設計図ができていますので、次に水彩紙に鉛筆で下書きをしていきます。

鉛筆は強く押さえて描くと、水彩紙に傷がついたり、練消しゴムで消しにくくなるので、軽く薄く描くようにします。

鉛筆の線は、絵の具で濡れた後には練消しゴムで消しても消えにくくなります。

絵の具を塗る前に、練消しゴムを紙面に手のひらで転がすようにしながら消すと、水彩紙を傷めずに消すことができます。

練消しゴムで紙面を強くこすると水彩紙の表面を傷めてしまいますので、そっと消すようにします。

濃く暗い色を塗る予定の部分は絵の具で鉛筆の線が消えてしまいますので、鉛筆の線がある程度残っていても気にする必要はありませんが、薄い色を塗る予定の部分は、色を塗ったあとも鉛筆の線が透けて見えてしまいますので、できるだけ線が薄くなるように消しておきましょう。

白川郷の合掌造りのある風景

透明水彩絵の具はその性質上、暗い色の上に明るい色を塗り重ねることができません。

そこで、色を塗っていく順番や、どこから描き始めるかが大切になってきます。

先に解説した、風景画の構図や、「明暗の配置図」がここで役立ってきますね!

たまちゃん

風景画を描く前には構図や明暗の配置など、あらかじめ決めておくことが必要なんだね。

さて、いよいよ風景画を描いていくよ!

初めに空、次に遠景を描く

下書きの鉛筆の線を薄く消して、塗る準備ができたら、いよいよ絵の具で塗っていきますが、透明水彩はその透明感のある性質から、塗る順番が大切です。

つい、主役のモチーフから描きたくなってしまいますが、透明水彩絵の具は、暗い色(濃い色)の上に明るい色(薄い色)を重ねて塗ることできません。

絵の中で奥にある一番広い面積の薄い色から塗り始めます。

風景画の場合、大抵は空が奥に見えていると思いますので、まずは、空から塗りましょう。

空を絵の具で塗る前に、空の部分に水を塗っておくとグラデーションが綺麗にできます。

また、空は、紙面の上側の方が自分から見て手前にあると考えて描きますので、上に濃い色を塗って、下に行くほど水を多くして薄い色にグラデーションを描いていくと遠近感を感じる風景になります。

空が描けたら、次に遠景を描いていきます。

先に記述した基本の「遠近法」を意識しながら描いていきましょう。

遠景は、モチーフの細かい描写は避けて、青系などの寒色系を薄めに塗り、輪郭をぼんやりさせると遠景を表現できます。

中景・近景を描く

遠景が出来たら、次は中景の部分ですね。

遠景と比べて中景は色を濃ゆめに載せていきます。

モチーフの「大小」も意識しながら、遠近法の技法を活用すると風景画に広がりが生まれます。

次に近景です。

近景は、暖色系の色を使って、色を鮮やかにはっきりした輪郭線で描くと手前の風景であることが強調され、遠近感が演出できます。

また、中景、近景を描きながら、太陽の方向を意識して、影を入れていくと風景が立体的に見えてきますよ。

細部を描きこむ

最後に、全体のバランスを見ながら、風景の細部を描きこんでいきます。

この時、絵から離れ、少し遠くから見て全体のバランスを考えながら描きこんでいくのがコツです。

細かい部分を描きこみすぎると、ごちゃごちゃした印象の絵になってしまいます。

たまちゃん

できた!

構図と遠近法を意識することで、素敵な風景画になったよ♪

広がりのある美しい風景画を描く際は

構図
遠近法

が大切でした。

風景画に慣れてきたら、次は「透視図法」を取り入れるとさらに風景画に広がりを演出することができます。

ですが、初心者の方は、まずは楽しく描いて、風景画を描くことに慣れてみましょう!

風景画を描くようになると、日常の景色の中にも今までとは違った魅力を発見したりするものです。

絵の題材を探して散歩してみるのも楽しいかもしれませんね。

風景画にはそんな楽しみもあります。

また、水彩画は、必要な画材が比較的安価で手に入りやすいことも初心者には始めやすく、嬉しい点です。

この記事が水彩画を始めるきっかけになって頂けると嬉しいです。

ゆい

風景画が出来たら、額に入れてお部屋に飾ってみましょう!
描く楽しさが倍増すること間違いなしです♪

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