水彩画の絵の具には大きく分けて、不透明水彩と透明水彩がありますが、ここでは、「透明水彩」について解説していきます。

透明水彩の描き方の基本7つを分かりやすく解説します。
基本の技法をマスターすることで、水彩画に対する苦手意識を克服し、楽しく描けるようになりますよ♪
透明水彩は、道具を揃えるのも簡単で、気軽にスタートできますし、その繊細な色の重なりやにじみが魅力の画材です。
しかし、いざ初めてみると、水のコントロールが難しく、初心者にとってはハードルが高いと感じて、挫折してしまうことがあるかもしれません。
この記事では、せっかく始めた透明水彩を、スタート時点でつまずくことのないように、基本的な技法7つを分かりやすく解説し、それぞれの特徴やコツ、練習方法を紹介します。
透明水彩をマスターするための第一歩として、参考にしていただけると嬉しいです!
透明水彩 7つの基本の技法をマスターしよう!



透明水彩画には、この7つの技法の他にもさまざまな技法がありますが、ここでは、透明水彩でよく使われる最も基本的な以下の7つの技法について詳しく説明します。
1. ウォッシュ(平塗り)
2. ウェットインウェット(にじみ塗り)
3. グラデーション
4. リフティング(色抜き)
5. ドライブラシ(かすれ塗り)
6. ウェットオンドライ(重ね塗り)
7. バックラン(にじみ模様)
ウォッシュ(平塗り)
ウォッシュとは、均一に色を塗る技法です。
透明水彩では特に重要な基本中の基本の塗り方で、背景や広い面積を塗る際に役立ちます。
見た目は単に色を平面に塗るだけで、簡単そうに思えるのですが、いざやってみると意外と難しく、初心者の方が最初につまずくのがこのウォッシュかもしれません。
1.塗る面の広さに応じて、多めに絵の具を溶いておきます。
2.筆にたっぷりと絵の具を付けます。
3.紙の上に絵の具を載せて、その置いた絵の具を塗り広げるようにして塗っていきます。
絵の具はあらかじめたっぷりと溶いておく
塗っている途中で絵の具が無くなって、絵の具を継ぎ足すと色が変わってしまいますので、色がムラになります。
大き目の筆を使う
紙の上の置いた絵の具を、素早く一気に塗り広げるのがムラなく塗るコツです。
小さな筆で少量の絵の具を時間をかけて塗ると、塗っているうちに紙が乾いてきてムラになってしまいます。
絵の具の溜まりを作らない
塗り広げた絵の具が紙の上で余っていたら、筆に付いている絵の具の水分を布やティッシュなどで拭きとってから、余っている絵の具をその筆でそっと吸い取るようにぬぐいます。
紙の上で余った絵の具をそのままにしておくと、絵の具が乾いたあとそこだけ色が濃くなったり、紙に凹凸ができたりします。
塗ったあとは、触らない!
塗ったあとは、絵の具が乾くまで触らないようにします。
塗った面が気になって筆で触ってしまうと、塗った色が剥げてしまったり、ムラになったりします。
ウェットインウェット(にじみ塗り)
ウェットインウェットは、紙が湿っている状態で絵の具をのせ、自然なにじみを作る方法で、水の力を使って描く、透明水彩ならではの美しさを表現できる技法です。



ウエットインウエットを上手く取り入れることで、表現の幅が広がりますよ。是非挑戦してみてくださいね♪
1.水彩紙に色を塗ります。
2.塗った色が乾かないうちに、次の色をのせていきます。
3.色をのせたら、触らずに絵の具が自然に広がって乾くのを待ちます。
ウエットインウエットの出来栄えは水彩紙に左右される
コットン100%の紙(アルシュやウォーターフォードなど)は絵の具が綺麗ににじみます。しかし、コットン100%の紙は値段の高いものが多いので、お手頃なものですと、コットン+パルプの紙(ホワイトワトソンなど)がおすすめです。
下に塗った色が乾かないうちに次の色をのせる
ウエットインウエットは、にじみを活かした技法ですので、下に塗った絵の具の水分が乾かない間に次の色をのせます。下に塗った色がどの程度乾いた状態で次の色をのせるかによって、次の色の絵の具のにじみの広がり具合が変わってきます。
最初に塗る色より、次にのせる色を濃ゆく溶く
最初に塗った色より水を多めに溶いた絵の具をのせると、バックランが起こって、野菜のカリフラワーのような模様になり、最初に塗った色が剥げてしまいます。上にのせる色は下の色より水を少なく溶きます。
塗ったあとは触らない!
塗ったあとは、筆で触ったりせず、絵の具の自然なにじみの広がりにまかせます。紙を傾けて絵の具の広がりを調整したりしてもよいですね。
グラデーション
「グラデーション」は、自然な濃淡をつけて描く方法で、美しい透明水彩絵の具の魅力を発揮できる技法です。
空や海など風景画では欠かせない塗り方ですので、是非繰り返し練習して、描き方をマスターしてみてください。



「1色塗り」と「2色塗り」のグラデーションの方法を解説します。夕焼け空を描く時などに使ってみてくださいね♪
(1色塗り)
1.絵の具をたっぷりと、濃度を濃ゆめに溶いておきます。
2.水を含ませた筆で、水彩紙を湿らせます。
3.筆に濃ゆめに溶いた絵の具をたっぷりつけて、水彩紙の上側部分から塗ります。
4.筆に付いた絵の具を水できれいに洗って落とします。
5.水で塗れた筆で3で塗った絵の具の下側を濡らすようにして下に広げます。
6.絵の具のにじみ具合を見ながら、にじみが綺麗に下に広がるように水彩紙を立てたり、横にしたりしながら調整します。
7.きれいににじみができたあとは、触らずに自然乾燥させます。
(2色塗り)
1.あらかじめ、2色の絵の具を濃ゆめにパレットに溶いておきます。
2.1色目の絵の具を上記「1色塗り」の2~4までと同じように塗ります。
3.1色目の下側に、2色目の絵の具を塗ります。
4.筆に少し水を付けて2色目の色を薄めながら、上側と下側の絵の具をつなげるように2色の間を筆を横に動かしながらグラデーションを作ります。
絵の具は濃ゆめにたっぷりと溶いて準備しておく
紙が濡れているうちに、手早く塗ることが綺麗なグラデーションを作るコツです。塗っている途中で絵の具が足りなくなって、絵の具を継ぎ足しているうちに、紙の表面が乾いてきたりしますので、絵の具は多めに溶いておきましょう。
水彩紙の濡れ具合が均一になるように濡らす。
初めに水彩紙を水で濡らす際に、紙の表面の濡れ具合が均一になるように濡らします。紙の一部分だけ乾きかけていたり、水が溜まっている場所がないように、均一に湿らせることで、絵の具がムラなく広がります。
水彩紙の表面が濡れている間にすばやく絵の具を塗る
紙の表面が乾いてしまうと、絵の具が綺麗ににじみません。紙が濡れているうちに手早く絵の具を塗ってにじませるのがコツです。
筆は横方向に、左右に動かしながら塗る
グラデーションのにじみを描く時には、筆を横方向に左右に動かして、絵の具が下方向に自然に滲んでいくように塗ります。上下に動かすと、にじみがムラになります。
リフティング(色抜き)
絵の具をティッシュや濡れた筆でぬぐい取ると、その部分の絵の具が取れて白くなったり、色が薄くなったりする技法です。
絵の具が乾く前にぬぐい取るとふんわりとした表現が可能です。
また、絵の具が乾いた後でぬぐい取ると、くっきりと白く色を抜くこともできます。
水彩紙の種類によっては、白抜きがあまりうまくできない場合がありますので、リフティングをする際は、あらかじめ紙の種類を選んでおきます。



リフティングは、水彩画ならではの透明感や、光を表現するのに欠かせない技法です。
紙の種類や、絵の具をぬぐい取る時の水分の調整によって効果が変わるので、いろいろ試してみると表現の幅が広がります!
1.色を塗ります。
2.絵の具が濡れている間に、ティッシュや水筆でそっとぬぐいます。
柔らかなグラデーションや光の表現に適しています。
ふんわりした雲や霧の表現ができます。
1.色を塗って、完全に乾かします。
2.湿らせた筆で紙の表面を傷めないように、そっとこすりながら絵の具を浮かせ、ティッシュなどで拭き取ります。
ぬぐい取る時の水筆の水分調節や、どの程度まで絵の具をぬぐい取るかによって、繊細な表現ができます。
球体などに反射した光に使用すると、立体感の表現ができます。
水彩紙によりリフティングの効果が違う
コットン100%の紙は、やわらかなリフティングの表現に向いています。
木材パルプを含んだ紙は、絵の具が水で取れやすいため、くっきりとしたリフティングがしやすいです。
水彩紙の表面が強い紙を選ぶ
リフティングで紙の表面を傷めないようにそっと絵の具を取ることが大切です。ゴシゴシこすると、紙の表面がケバ立ってしまいます。紙の表面が強い種類の水彩紙を選ぶと失敗しません。
リフティングに向いている水彩紙
コットン100% アルシュ・ウオーターフォード・ランプライト など
木材パルプ入り ホワイトワトソン・モンバルキャンソン・マーメード など
ドライブラシ(かすれ塗り)
ドライブラシとは、筆の水気を切って、絵の具のかすれの風合いを活かして描く塗り方です。
風景画や動物の毛並みなど、ドライブラシを活かして描けるモチーフは多くあり、水彩の技法の中でも、必ずマスターしておきたいひとつです。



私のふわふわした毛並みをドライブラシで描いてみてね!
1.筆に絵の具をつけたあと、
乾いた水彩紙に
コシのある固めの筆を使う
ホルベインのリセーブル筆など、特殊加工された繊維と獣毛をブレンドしたコシのある筆を使うと描きやすいです。